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そこで重要になるのは、″秘境″を訪ねる側の考え方、姿勢である。
「ツァーでいけるのだから安心。
お金さえたくさん持っていけば、なにも怖いものはない」というような安易な考えで行かれては困る。
大自然のなかで伝統的な生活を守り続ける人たちは、厳しい自然環境にうまく調和し、さまざまな面で生活の知恵を十分に発揮して、非常に人間らしい生活を送っていると、私には思える。
私は近代科学文明の直中にある日本を離れて″秘境″に入るたびに、私たちが自分だけの力で生きていく能力や生活の知恵を、ほとんど失ってしまっているということを思い知らされるのである。
″秘境″を訪れて、各地の人びととの自然なふれあいの中から、結果として彼らに教えられていることは数知れない。
また逆に、私たちが彼らに伝えられることも、もしかしたらあるかもしれない。
だから私たちは、彼らと「お互いの知らないことを学びあおう」という素直かつ真筆な姿勢で接し、互いに良い意味での刺激を受けあうことが大切なのではないだろうか。
どちらかが上に立つということなく対等の立場で付き合い、常に相手の立場に立って物事を考えることを忘れない限り、他地域からの訪問者が″秘境″に暮らす人びとの生活文化を乱すことはないと、私は信じている。
またこれらを念頭においていれば、彼らと良好な関係を築くことができ、さまざまな知識の吸収もできて、より有意義で楽しい旅になるはずである。
「いつでもすぐに写せるようにカメラを用意して、この道をまっすぐ一列になって進んでください」と、インドネシア人のガイドが告げる。
私たちは草むらの1本道を緊張しながら進む。
と、どこからともなく、「ワシ、ワシ、ワシ」の叫び声が響く。
どこにも人影がない。
「あっ、あそこに」と1人が驚きの声をあげる。
なんと、木を束ねてこしらえた見張り台の、頭上6メートルくらいのところに立ったダニ族の男が、弓矢をかまえてこちらを狙っているではないか。
そのいでたちから察するに、首長らしい感じだ。
先頭にいた私を狙って矢をつがえた弓の弦が「ビーン」と鳴った。
とっさに一行は草むらに身を伏せる。
恐怖の一瞬だ。
だが、矢は飛んで来ない。
見上げると、矢はつがえたままだ。
まさか射るわけがない。
おどしの空砲だった。
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